全方位戦略 価値創造 ゲームチェンジャー
『全方位戦略』

我々、食料品卸売業にとって、
中心顧客は食品スーパーマーケットですが、
従来は考える余地が無いほど、全てがこの 『全方位戦略』 でした。
つまり、余ほどのお金持ち世帯は、
百貨店で食料品を購入されていたかも知れませんが、
ほとんどの世帯は昭和30年代後半以降に生まれた、
スーパーマーケットが、その購買先の中心となっていました。

高度経済成長期がスタートし10年ほどが経過したとき、
資本の集中というより消費の集中が、『安売り』 に依って起こりました。
乗用車に例えれば、一部の高級車に対して、大衆車がその量において席巻していました。
もっとも、これを全方位と呼ぶかどうかは疑問も残りますが、
8割9割は同じ価値基準に於ける金銭感覚で、消費に向かっていたと思われます。

その後、先の50年ほどの高度経済成長時代を経て、
横に伸びていた所得層の分布図は、縦の伸びへと変遷し、
その絶頂期には、縦に伸びた層を横に切り取り、
ターゲットとして特化し、事業を発展させることが出来ました。
しかしながら、高度経済成長期の終焉を迎えると、
そのそれぞれの層を成す絶対数が細り始め、
一部を切り取ったターゲットでは、事業そのものが成立しなくなって来てしまいました。
最安値を標榜するディスカウントストアでも、
物珍しさが鈍化するとともに危うくなってきています。
経済成長が止まると、向かう先は、
その成長より、落ち着きがあり、持続性のある価値へと移行していくのも、
無理からぬところかも知れません。

1996年、既に 『「信」 無くば立たず』 という書籍が、
フランシス・フクヤマという米国在住日本人によって著されていた事は、
驚きに値しますが、少し想像力のある人物なら、容易に辿り着くところかもしれません。

経済格差によって歪む信頼関係より、
文化を中心としたCommunityによって、
市民の暮らしは成り立っていくとする予想は、
スーパーマーケット事業が、その中心的役割を果たすとすると、
富める世帯も、残念ながら瞬間的にそうではない世帯も、
地域単位でより良い暮らしの基盤を、
昔から繋がってきている地域の文化を中心に纏まっていく姿が、
この先落ち着いて暮らしを営んでいく上で、
最も適切で、食品スーパーマーケットは事業として
営利的にも地域社会的にも、
そこに立つ瀬があるのではないかと考えています。

『価値創造』

少し前、JAPAN AS No.1 と言われた時代、
『日本式経営』 なる言葉が誕生しました。
欧米企業を日本企業が席巻した時代の話しですが、
では何故?と日本企業の経営形式が研究の対象となっていました。
その後、日本経済は意図的に低迷に押しこめられ、
GAFAと略称されるComputingの進化を基盤とした企業が、
投資資金を梃に世界を席巻する時代に入りました。
これら欧米式経営に傾倒していった時代は、
これまた30年間ほどの隆盛期で衰退時期に入ろうとしています。

経済は、豊かな暮らしの手段であり、一部であるはずなのに、
暮らしから切り離されて、
固有の法則の元に発展していくような幻想が、
ひとを縛り付けた結果となり、
振れた振り子の頂点から、戻ろうとしているかのように見えます。

チューリップの球根1個は、
あくまで綺麗な花を1個咲かせる存在でしかありません。
そんな絶対的価値を離れて、
いずれ更に、自分が購入した価格より値上がりするだろうと、
相対的な価値を見出そうとする、
非生産的な経済が固有の法則の中身ですが、
それより咲いた1個の花を、
みんなで愛でる事に価値を見出す経済に、
移行しようとしているような気がするのです。

花の美しさの価値を共有できるようにするところに、
経済を生み出す術があり、
その事が新たなる価値の提案となり、
実のある経済の発展に繋がり、
その事こそが、地域の文化として価値を創造して行くのではないかと思います。

『GAME CHANGER』

安く仕入れて安く販売し、地域世帯の家計を助ける。
このような発展途上の段階があった事は、確かに事実で、
その社会的必要性を提唱して、実践した小売り企業は、
地域の商店街という文化を破壊しながら、一極集中した時代もありました。

時の流れは斯くも冷酷で、消費は厳しいものかも知れません。
時は必要性を充分に満たし、
むしろ 『あったらいいなあ』 に、流れているのでは・・と思われます。
この 『あったらいいなあ』 が、物の場合であれば、
探せばあるような気がしますし、
無ければ開発すれば良いのだと思います。

しかし、急激な時代の変化で効果的な戦略を打ち出すためには、
競合他社が追随できない企業価値を、
地域の方々が望む、この 『あったらいいなあ』 の本質を見抜いて打ち出す施策が、
本当の意味での効果的なブランディングになるのではと考えています。

弊社は、スーパーマーケット事業を営んでいる訳ではございません。
その脇を伴走する業務をしております。
脇にいるからこそ見えるポイントがございます。
そのポイントでゲーム自体を変えてしまう事が出来、
そのことが、皆さんの地域を暮らしやすいように暮らせる提案に、
繋がることが私どもの希望です。

『地域社会貢献事業』

低成長時代に入り消費の絶対数が縮小していく時代に、
スーパーマーケット事業に於いて売上額は周りから、
異業種、あるいは他業態からその市場を侵食され、
益々事業運営状態は、
過去50年来に無い変化を求められる、
そんな時期が到来しているように感じています。

食品販売事業運営につきましては、
粗利額から捻出する販売一般管理費も、
消費の縮小に反比例するように増大をして来ています。

一例を挙げると、
1億円の売上額で粗利率25%とすると、
粗利額は2,500万円になります。
その売上額の為の販売一般管理費額率(設備償却額含む)を21.0%とし、
仮に営業外損益額を0とすると、
経常利益率は4%になり、
その額は400万円となります。

しかしながら人件費、光熱費をはじめ諸費用は上昇傾向にあります。
販売一般管理費額が10%上昇すると、
その率は21.0%から23.1%に上昇します。
そうすると、4%あった経常利益率は1.9%と半減してしまいます。

売上額・粗利額・率、つまり入ってくる額は何も変わっていないのに、
出ていく額が僅か10%上昇するだけで、
事業の生命線である経常利益額は、
半減してしまう事になります。
そこに借入金利の上昇傾向も認められると、
定期的リニューアル・新店舗出店等の資金調達・返済は、
投資に対する収益見通しが細くなってしまう状況です。

社会経済的には失われた30年という表現をしていますが、
では、私たちは貧しくなったかというと、
そのような実感もまた、決して一般的ではないように思われます。
価格を安くしても、
販売点数が売れる訳ではないとなると、そう思わざるを得ません。

それぞれの家庭の事情に即した商品が、
必要量売れるだけという事じゃないでしょうか。
また、即今必要じゃないけれど、
欲しい品物・事柄にはお金を出す傾向でもあります。

そのような前提を考慮すると、
商品価値以外の価値を企業に付加することが、
いくつかある集客ポイントのひとつと成り得るのではないかと考えています。

そのひとつが 『地域社会貢献』 であり、
地元企業として得意な分野ではないかと思います。
そしてこのポイントは、
冒頭のスーパーマーケット事業の市場を侵食してくる、
他産業競合先には出来ない事だと考えている次第です。

ひとつ 『社会貢献』 が如何に企業価値を上げるかの例を示すと、
今ホットな話題にMLBの大谷翔平選手が、
日本の全国2万の小学校に、野球のグローブを贈呈したことが上げられます。
その事で、彼の野球技術が高まる訳ではありませんが、
彼のCMタレントとしての価値は上がり、
スポンサー契約料は跳ね上がりました。
彼の価値が野球技術に留まらず、
人間性を高く評価され、
その事が彼の商品価値を上げた事になります。
大谷翔平は個人事業主ですが、
これが法人企業に当てはめれば、容易に想像がつくと思います。

『営業活動』

私たちは、スーパーマーケットさんに於いて、
弊社商材が売れれば万事OKという考え方ではなく、
あくまでその企業さんの売場が賑わうことを、
『営業諸活動』 の目的としています。

と申しますのも、
私どもの商材は市場間取引には無い、
ある意味高品質の青果類・精肉類を扱っておりますが、
それらの商品群のマーケットシェアは、
全体の30%が実際に存在していると、
過去実績に於いて証明されています。

弊社の営業数値目標はその30%の中の33%に過ぎません。
全体では10%という事になりますが、
その構成比が実現できれば残りの20%は、
私どもの10%の商品を見て売り込みに来られる、
他企業さんの同様ランク商材分です。
当然後から来られる商材は価格ダウンして入って来られるので、
値入率を取りやすくなります。
但し、これは、判断が難しいですが、
あくまで同レベルでの品質である事が前提です。

しかしながら、
売上構成比30%の商材で売場全体が潤う訳はなく、
残りの70%が当然業績には、影響が大きい訳です。

また、私たち30%の商材は、
残りの70%の商材によって支えられていると言っても過言ではありません。
この70%の商材の品質が良く、
その価値を表す価格で販売し、
しかもその中で25%~30%の粗利率を実現しようと考えれば、
バイヤーだけではなく、私どもベンダーも一緒になり、
PDCAを回しながら、卒なく粗利額を作る必要があります。
その意味で、
売先と仕入先の通常では利害が対立する関係から、
一緒に思考し、粗利を創造して分配する関係作りが、
『営業活動』 だと捉えています。

自由市場・資本主義経済の原則に、
Conflicts of interests (利害相反するものの原則) があります。
しかしこれは欧米の思想に基づくものであり、
我が国では、共有し分配することこそが基本原則で、
ビジネスは強くなると感じています。
その為には、既成の形式を見直して、再構築する必要を感じています。

『PDCA・OODAサイクルをまわす』

商品で更なる集客するためには、
先ずは品揃えが第一だと考えています。

ユーザーが欲しい商材が、
欲しい形で、いつであるという状態が、
品揃えだと捉えています。

例えば、秋には冬の鍋商材が売りになります。
鍋といえば白菜です。
少し古いですが、
話題のオレンジ白菜が置いてあるかどうかだけではなく、
1個丸ごとの白菜がデーンとあり、
ユーザーの目を引くことから始まり、
でも欲しいのは1/2玉ではなく、1/4玉の場合、
そんな細部にわたってまで、SKUの数を読み切れるものではありません。
では何でカバーするかという事になりますが、
そこでPDCAが回るかどうかだと思います。

旬の食材のスタート時期であれば、データはあっても1年前のデータです。
先ずはそのデータを頼りに品揃えをしても、
動きはいろんな要素で全く違う動きをします。

そうなれば、その時期は今年のデータを、
2時間単位で作る必要があります。

でなければ、機会ロスはデータとして不充分になり、
次に活かすことが出来ません。
すべての商材で、こんなことをするのは費用対効果の無駄になります。
そこで先の旬の食材のスタート時期に、
MDとして、注目商材を管理し、
修正行動可能な品目数に絞って、売り場管理をします。

とにかく売り場に潤沢に品揃えされているように、
品出しを小まめにチェックする必要があります。
開店から2時間のSKU別のPI値データは、
機会ロス無しで取らなければならないことが分かります。
その2時間のPI値をレジデータから集めれば、
午後からの来店人数と掛け合わせれば、
1/2の数と1/4の数は、見当外れにはなりませんので、
今度は1日のPI値データが取れます。

そこに変数である、天候を変数として入れれば、
後は曜日別、来店指数等で販売数予測は立ちます。

では、これらの事を企業で組み立てる場合に、
あくまでこれは各店での話しとなり、
商品部のバイヤーの話しではなくなります。
商品部バイヤーは適切な品質の商材を仕入、
各店に供給し、値入計画までを立案するだけで、
その値入計画による差益を粗利額として最大化する為には、
各店長が自店を主導することが肝要で、
その方が一般販売管理費を活かすことが出来ます。
その意味で、これからの時代は商品部が値入の計画を作り、
店長が計画以上の粗利額を作ることが望ましいのではないでしょうか。

さて、ここまでは、店舗単位で行われる 『改善』 の領域で、
言ってみれば 『売れて儲かる商品』 で成果を上げる事が可能です。

しかし、時代はこの30年間で大きく変わっています。
30年間は、子世代がそっくり親世代と入れ替わるという年月です。
スーパーマーケットの新店誕生の、
『創成期』『成長期』『成熟期』『衰退期』 と分けますと、
ちょうど 『創成期』 の店舗が 『衰退期』 の入り口に差し掛かる時期かと思われます。

そのように考えると、
スーパーマーケット事業が、
地域社会から求められる役割自体が、大きく変わっていて当然です。

スーパーマーケット事業創成期の60年前は、
働く女性の比率は低く、
その役割りは家事をこなし、
少しでも家計を助ける為に安い商材を求めて、
新聞折り込みに掲げられるチラシを見て、買い物に出かける図式でした。

しかしながら、現在の女性就業率は男性のそれに匹敵し、
家計を助ける概念から、
家計を男性と一緒に形成するところにまで進んでいます。

その事は、店舗の営業時間を見れば明らかなように思います。
朝8時から夜10時まで営業する意味は、
それらを反映しているのでないでしょうか。
では、それほど変化している社会状況に対して、
小売業態を最適化させる必要が問われるのも無理はありません。

適合したスタイルを見出さない限り、
後発の小売業態に、その市場を侵食される事になります。
つまり 『改善』 の枠を超えて、
過去の成功事例の上に、
更に時代にマッチした価値基準を、
企業に取り込む必要性が求められ、
『生まれ変わる』 くらいのドラスティックな、
思考変換が求められていると思えるのです。

そのように捉えれば、
現在提唱されているビジネス推進手法 『OODA』 の導入が、
その助けになるのではないでしょうか。

漠然と 『変わった』 と捉えるのではなく、
一歩進めて 『何が』『どのように』 に換わっているのか、
客観的に観察をして、
そのデータを集め分類毎に整理する 『Observe』 、

その分類を構造的に並べ直し、分析し、
未来予測の仮説を立てる 『Orient』 、

その仮説を基に課題解決の構造的優先順位を協議し、
何と何から実行に移すかを決定する 『Decide』 、

後は行動を起こし実践する 『Act』 となります。
ここではその結果の判断に至る期間を、
意思決定の範囲に加えておく必要を強く感じます。

冒頭に掲げた 『地域社会貢献』 に対する要望は、
未だ顕在化していないように見えますが、
実際にその貢献を企業として地域に示すと、
『賛同』 を得られる事は既成事実となっていて、
その実践企業には経済的数値として現れています。
気を付けたいポイントは 『社会的義務・責任』 ではなく、
あくまでもっと積極的な 『貢献』 だと思えます。


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